2008年06月07日

氷室冴子さん死去

少女小説の大御所、氷室冴子さんが亡くなられたそうです。
アサヒ:コムの記事
享年51歳。死因は肺がんだそうです。

初期〜中期にかけての作品は大体読んだと思います。
同じ作者なのにどうしてこうも違うのか、といつも不思議に思うくらい、作品の一つ一つが違った個性を放っていました。

氷室さんの作品に傾倒したきっかけは「シンデレラ」シリーズ2作、特にミステリ風展開でありながら同時に主人公の成長物語でもあった「シンデレラミステリー」でした。
精神的にひ弱な主人公「利根」が現実のある出来事に耐えられなくて物語りや童話の主人公たちが住まう夢の国に逃げ込み、住人との交流で立ち直った「シンデレラ迷宮」の続編で、利根が特に愛したヒロイン、ジェーン・エアが行方不明になった、という話です。

利根との約束を守って、第二の輝かしい人生に乗り出したはずのジェーン。ところがジェーンはある時急に新しく出来た友人たちを全て放り出し、行方不明になってしまった。
利根はジェーンを慕ってジェーンの家に乗り込んできた新しい友人たち一人ひとりに話を聞き、そして、そもそもジェーンはまだ生きているのか、もし殺されたとしたら誰にか、を推理していく。
しかしジェーンの失踪には、利根自身が躓いたのと同じ問題が潜んでいました。

利根の逃げ込む夢の国の住人は、決して優しくありません。むしろ利根に対してきつくあたります。そして哀しい。
「どうしてこの場に不慣れな私に優しくしてくれないの?」と嘆きつつ、逃亡先にそんな殺伐とした夢の国を選ぶ利根は、実は結構強い精神の持ち主なのかも、と思わなくもありません。
その、弱いようで強い利根が、夢の国ならではの登場人物たちと対話して、自分を再構築していく物語の作りにほれ込みました。
そういう物語の構造が特に「素敵だ」と思えたのが、2作目の「ミステリー」の方だったんです。
利根いわくの「容疑者」への尋問が、同時に利根自身の心との対話になる。そしてジェーンの行方を推理する過程が同時に利根がこの国に再び逃げ込んできた原因を逃げることなしに考える過程になる。その二重構造が不思議で不思議で、とても魅せられたのです。

古代ファンタジーものというジャンルがあまり好きでなくて、「銀の海〜」シリーズ以降は読んでいませんでした。
けれど、そろそろ食わず嫌いをやめて読んでみようと思います。

心からご冥福をお祈りします。
タグ:訃報
posted by ちく at 01:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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